サッカーが上手くなるために 〜緊張感のある中で臆することなく「サッカー」をすること

先日、U-12・1stチームのリーグ戦が開幕しました。
昨年度は8月頃より僕が指揮を執ることになり2016年度を終えました。そして新年度は後藤コーチが第一監督となり、さらなる飛躍が期待されます。

先日の開幕戦と同じ日に行われた第2節、両試合をもとに、他のジュニア(小学生)のカテゴリーでもジュニアユース(中学生)年代でも、レアッシというクラブが選手のサッカー面での育成をどのように考えているかをお伝えしたいと思います。

先日書いたコラム、「サッカーを学ぶということ〜」にもあるように、僕らは選手が何も考えずにプレーするのではなく、「状況を判断しながら決断する」というプロセスに重点を置いています。

『リスクはあるがきちんとサッカーを学ばせる』

先日のU-12・1stのリーグ戦でいうと、「失点するというリスクはある」のですが、ビルドアップ(ディフェンスラインからパスをつなぐ)することにもチャレンジしました。

GKには相当なプレッシャーがかかるため、失点のリスクを考えると何も考えずに前方に蹴りたくなるのですが、それを繰り返してもサッカーは上手くなりません。それはディフェンスラインの選手も同じです。
しかし、これは日本でよく言う『自分たちのサッカーをする』ということとは異なります。大事なのは、ビルドアップした時の攻撃に関する優位性を理解して、いつショートパスでつなぐのか、いつロングパスを使うのかを、『選手自ら判断する』ということが育成年代においてはとても重要だということです。

相手のプレスが効いているのに『自分たちのサッカーをする』とうのは観点がズレています。

僕らが提示するのはサッカーの原理原則として、なぜビルドアップの攻撃が有効か、なぜロングボールを放り込むだけの作戦は難しさがあるか。
相手のプレッシングがどうなっていたらロングボールを使うか。その際に何を見て考えるか。といった、戦術的な部分です。

『意図のあるプレーのやり合いが選手を向上させる』

このような考え方でサッカーを進めて行くと、そこに「駆け引き」やインテリジェンス(知性)が生まれてきます。
例えば、U-12の場合、相手のロングボールに対してどのように守備をするかというのはトレーニングしています。また、相手がビルドアップ(ショートパスで展開)する場合の、2種類のプレッシング方法を選手は理解しています。
この時、相手は同じことをやってもこちらが対策を持っているわけですから、ディテールを変更する必要があります。その細かなディテールの変更に対しても、こちらは次のプランを持っているのですが、僕はそういう「戦術的な駆け引きをやり合うプロセス」が選手を成長させるのではないかと思います。

しかし、相手が対策を練っているにもかかわらず、同じことを繰り返すとどうなるでしょうか。
例えば、ロングボールの対策を相手が上手く対応しているのにそれを繰り返す。そうすると、運任せの展開になります。セカンドボールがどこにこぼれるか? その気まぐれな運に頼ったサッカーを繰り返しても、子どもたちが成長しないのは容易に想像できます。

別の例では、開始5分で自分たちのプレッシングが機能していないことに気づいているのに修正しない。
ある試合では、こちらがGKからビルドアップするのに相手のプレスは一人。こちらのセンターバックとセンターハーフを含めると「3対1」の構図です。
ここにセンターフォワードがいくらプレスをかけてもボールは奪えません。何故なら「3対1」という状況を優位にするためにMFとFWは高い位置を取りスペースを広げているからです。

モウリーニョがレアルマドリード時代にとった戦術に似ているかもしれません。

そしてそのビルドアップから攻撃のチャンスを作っていたのですから、後半はそれを防ぐために2枚以上でプレスに来る可能性が高い、と予想されます。
そして、2枚以上でプレスに来た時に何をするかも昨年度末に少しですがトレーニングしたため、その外しかたは選手は頭では大方理解しています。
どうやってドリブルで外すか、その後に何を見て考えるか.etc….

そういう「戦術的なやり合いが頻繁にある」のがスペインの現状で、育成年代において「戦術的なやり合いがまったくない」のが日本(福岡)の現状です。
どちらが良いかはクラブの価値観で良いと思いますが、レアッシは前者が必要であると考えています。

『選手の将来のためにクラブがリスクをかけるか!?』

クラブチームというものは少年団と違って、保護者の方のお手伝いはありませんが、選手が集まらないとクラブが継続できない可能性が出てきます。そういう意味で、継続するためには「試合で勝つことで他との差別化を図る」というのはとても重要な要素です。
レアッシも同じで、結果を出さなくてはクラブの経営が成り立たなくなる可能性があります。

しかし、レアッシというクラブが目指すのは「世界に通じるサッカー選手の育成」です。
試合結果はもちろん重要ですが、同じくらい『サッカーの質』も重要です。
ですのでクラブの近い目標は『質の高い(ヨーロッパ、関東で通用する)サッカーをしながら勝利する』というものです。

GKから攻撃を組み立てることは失点をするリスクはあるが、選手がサッカーを学ぶために必要なことなので、それは公式戦での勝敗と同じくらい重要なことと考えています。

以前書いたコラム「勝敗を選手のせいにする指導者はいますぐ…」ではとても大きな反響を頂きましたが、同じような考えのもと、「指導者はリスクを取ってでも、選手を成長させる義務がある」と思います。

『10年後に残るクラブ』になるためには、本質的なことを考える必要もあります。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

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