サッカーの指導者だけでなく選手自身、そして選手をサポートする方々が思う疑問の一つに『どうやったらサッカーが上達するのか』ということがあると思います。練習自体の問題、試合環境や試合への取り組み方の問題など、様々な要因が絡まり合っているのですが、その一つである『試合環境』というものについてクラブがどのように考えているかをお伝えしたいと思います。
M-T-Mとは何か
上手くなるためのプロセスは、日本の指導者の間でも認識されているM-T-Mというものがあります。これは「試合→練習→試合」の英語の頭文字を取ったものです。
簡単に言うと、試合をやって問題点を練習で解決して次の試合に臨む、といった流れです。一見当然だと思える考えですが、実は日本の、特にジュニア(小学生)やジュニアユース(中学生)のみならず、育成年代全体にこの考えの難しがあります。
サッカー大国スペインに見る試合環境と日本の違い
僕らが留学していたスペイン・バルセロナをはじめ、その他のサッカー先進国では年間を通じたリーグ戦が主流です。つまり日本でいう小学1年生から高校3年生まで全員が、それぞれのカテゴリーで年間を通じたリーグ戦を戦っています。
なぜなら、各国のプロチームは年間を通じたリーグ戦が当然主流で、カップ戦は特別なものだからです。ですのでプロの下にある育成年代も同じ考えでリーグ戦が主流、時々カップ戦、という同じ構図になっています。国や地域によって違いがありますが、リーグのチーム数は例えば16チームで構成されていればホーム&アウェイ(同じ相手と2試合戦う)で合計30試合を年間で戦います。
それを9月のシーズン開幕から翌年の6月頃までに終えるのですが、冬や春の短期休暇を除くと、基本的には毎週末に1試合公式戦が入ることになります。そして試合時間も長く、小学生年代でも60分ゲームなどです。
毎週末に試合があることでその週の練習の目的が明確になる
写真はレアッシのU-13全体と個人の試合に関するデータをまとめたものです。
月に何日試合があって総試合時間や本数、公式戦と練習試合毎や集計したもの、個人がどれくらい試合に招集され何時間試合に出ているか、その割合はなどが記載されています。
このデータの詳細はさておき、レアッシが一番気をつけているのは実は『試合の本数ではなく月に何周試合が入っているか』ということです。
この目的は1日にたくさん試合をすることではなく(テーマがあって行うこともありますが)、試合環境と日々の練習を密接に結びつける狙いがあるからです。
つまり、あるカテゴリーで月に1日だけ試合を組んでその日にまとめてたくさん試合をするのではなく、1日の試合数は少なくてもできるだけ毎週試合が入ることによって、週3回の練習テーマが明確になり、前述のM-T-Mをより細かなサイクルで実践できるという考えです。
毎回同じ練習を繰り返す漠然とした練習計画ではなく、前回の試合のフィードバックをその週の練習に取り込みます。当然、週3回ですべて同じ練習を繰り返すことはありません。テーマが同じでもオーガナイズを変えたりしながら週末の試合へ向けた改善を行います。
日本では年間を通じたリーグ戦という文化がまだ根付いていないのですが、協会はそれを根付かせようとしています。グランドの問題、チーム数の問題、指導者の試合に対する考え方の問題など様々な問題がありますが、日本でもJリーグと同じような環境が育成年代でも行えるようになると、全体のレベルアップにつながるかと思います。それまでは各クラブで年間リーグの重要性を認識するとともに、いかにしてそのような環境を選手に提供できるかを試行錯誤しなければなりません。
「全ては選手が成長すために」。プレイヤーズファースト、指導者ではなく「選手のための環境」作りが重要です。