日本サッカー、特にジュニアやジュニアユース年代において使われる「大人のサッカー」というワード
私の知る限りでは、この言葉は褒め言葉ではなく批判を込めて使われる場面がほとんどのように感じます。そしてその対象となるのは「戦術」についてが多いのではないでしょうか。
しかし私はサッカーにおいて大人のサッカーや子どものサッカーとは存在しないと考えています。あるのは年齢や理解力・フィジカルやテクニックといった要素を考慮し、それぞれの特徴に応じたサッカーだと思います。今回はその考え方について話をしていきます。
そもそもジュニア(小学生)に戦術は必要なのか
私の答えはイエスです。なぜなら戦術は選手がより良くプレーする事を助けるからです。
例えばドリブルが得意な選手がおり、彼がボールを持った際に味方が広がってパスコースを作ってくれれば相手も分散してスペースができ、ドリブルが容易になるかもしれません。これが味方がボールに近付いてくると相手もそれにつられて寄ってきて、人が密集してもの凄く狭いスペースでプレーしなくてはなりません。
果たしてどちらの方が容易にドリブルができそうでしょうか。そしてこの話の中で「広がる」という行為が戦術アクションとなります。これを小学3年生の選手に求めることが何か選手の成長に弊害となるのでしょうか。
年齢や理解力に応じた戦術アクションを身につける事は選手自身がより良くプレーする事を助け、チームがサッカーの質を向上させる事に寄与するのです。
「大人のサッカー」とは年代にそぐわないものである
私自身がもし「大人のサッカー」という言葉を使うのであれば、それはジュニア年代などで高校サッカーと同じような事を行なっている場合です。
たくさんの走り込み・GKからCFに向けたロングボールの応酬・たくさんの空中戦の競り合い・セカンドボールの拾い合い・激しいボディコンタクトetc… 全ての高校サッカーでこういった事ばかりをやっているわけではないと思いますが、これらが未だに主流だと思います。それを同じようにジュニアで行なってしまえば、大人(高校生)のサッカーとなってしまうのです。
年代が上がれば上がるほど勝利に対する執着は高まります(それは選手だけでなく保護者や地域、はたまた学校やOBなど外的要因も多分に含む)。だからこそジュニアなどの低年齢からしっかりと基礎的なサッカーの原理原則となる戦術を丁寧にしっかりと教える必要があるのです。
子どものサッカーとは存在するのか
私は基本的に「子どものサッカー」というものも存在しないと思っています。よく『子どものうちはサッカーを楽しむことが大切だ』や『子どものうちはテクニックに拘ることが大切だ』という意見も雑誌などで目にします。選手が『楽しい』と感じる要因の1つに”成功体験”というものがあると思います。
では最初の方に述べた「広がり」という話の中で例えると、テクニックのまだ高くない選手がボール保持者から離れてパスコースを作っている。相手はボールに集まっていてボール保持者は、広がってフリーになっているその選手へパスを送る。
コントロールを一度ミスしてしまうが相手から離れていた為もう一度ボールを触り直す時間とスペースがあり、ボールをしっかり置き直してからシュートしゴールを決める!そんな場面で、もしボールに近付いてパスを受けようとしたらコントロールミスの時点でボールを失ってしまうかもしれません。
もちろんテクニックの習得はとても大切です。しかしそれは一朝一夕で身につけられるものではありません。試合ではずっとミスを続けるかもしれません。もしかしたらそれは何試合も続いてしまうかもしれません。
しかし戦術は早ければ次のプレーから身につけられる物もあります。それを身につけて以前より良くプレーができるようになれば選手は成功体験をする事ができます。
だからこそテクニックのみにフォーカスするような「子どものサッカー」は成立せず、年齢や理解力に応じて適切な内容の戦術を適切なタイミングでテクニックと共に学ぶ事が大切になるのです。