世界で戦った指導者の言葉
「身体能力だけであれば、日本人でもやれる選手はいます。
ただし、技術や判断の部分も兼ね備えた選手はいません。
そして技術や判断が致命的に欠けていると、世界大会では通用しないのです。
『身体能力の高い選手を、何とか身体能力だけではない選手に育てられないだろうか』というジレンマは監督としてずっと持っていました。」
これはサッカークリニック2月号(ベースボール・マガジン社発行)に載っていた昨年10月の行われたU17W杯で指揮を執った元U17日本代表監督の森山佳郎さんのインタビューにあった一文です。
この一文は本当に我々指導者が考えなくてはならない様々な事を含んでいると思います。
選手にとって余裕のある環境であれば、これまでの指導方法で育った選手でもおそらく充分なのでしょう。
しかし世界大会や国外リーグだけでなく、選手にとって厳しいレベルの環境でプレーする際には足りない事が多いのです。
それは中学生になってから・高校生になってから判断や戦術を教えるのでは遅いのかもしれません。
そして活動時間の限られている代表監督が選手を大きく変えるのは簡単ではありません。
だからこそ日常的に選手と接している私たちが変わることが選手を変えるためには必要なのだと思います。
大事なのは「個」か「組織」か?
インタビュー後半ではよく議論されがちな「個と組織のどちらが大切か」ということについても言及されていました。
森山監督は「個を活かすのも組織ですし、組織の中で周りを活かし自分も活かしていく力も『個』なのです。
戦術的な能力も『個』なのです。身体能力の話も同じではないでしょうか。
『〇〇だけ』の選手は世界大会では通用しません。もっと総合的な個々の『戦闘能力』のようなものをベースから高めていかないと、ワールドカップで勝負するのは難しいでしょう」と答えています。
ですので、やはり年代の違いや選手のレベルや理解力によって割合が変わる必要はありますが、サッカーをボール扱いなどにはっきりと分類するのではなく『サッカー』として選手たちに学ばせる必要があるのだと思います。
サッカー選手として身体の大きな子どもになっていないか?
先日、インターネット上で面白い言葉を見つけました。
「子どもは身体の小さな大人ではない。しかし大人が身体の大きな子どもになっているのではないだろうか」
これは「子どものうちに大人と同じような事を求めすぎると、理解力や身体能力で大人とは違いが大きいので良くない影響もあるのでは」という意味と「その影響でサッカー選手として学ばなければならない要素を先送りにしてしまい、サッカーを理解していない選手がユースやそれ以上の年代になっても多いのではないどうか、という提言を含むものでした。
そういった現状を変えるためには早いうちから試合に必要な技術と年代や理解力に応じた良い判断を下すための戦術要素を学び、小さいうちから【サッカー】をプレーさせる事が大切になるのではないでしょうか。
まだまだ試行錯誤は続きますが、選手が成長し特徴は持ちながらも何かに偏るのではなく、技術・戦術・メンタル・フィジカルの分野で良いレベルを備えた選手へと飛躍してくれるよう努力していこうと思います。