今回は2018年 3/24ー4/2の日程でレアッシが行なったスペイン・バルセロナ遠征並びにその期間で参加した国際大会にて体感し、経験した事を基にジュニアサッカーについて感じた事を書いていきたいと思います今回私が担当したチームが対戦したのは練習試合2試合を含めて8試合で、その内訳はスペイン5チーム・アメリカ1チーム・オランダ1チーム・メキシコ1チームでした。さらに宿舎から徒歩圏内にあった会場で見たのがPSV・パリサンジェルマン・バルサ・バレンシア・トットナムといったトップチームが各国の1部リーグを戦うクラブのジュニアチームの試合です。
日本以外の海外クラブで行われている事とは!?
まずはどのチームもゴールキックをFW目掛けてロングボールを蹴るのではなく、DFや中盤へと繋いで前進しようと試みていました。
さらに相手のプレスが1topなのか2topなのかでビルドアップのやり方も変えてきました。レベルの高いクラブは3種類くらいのビルドアップを使い分けていましたし、少なくともそれくらいできないと相手も対策をすぐに施してくるので試合を優位に進められないのでしょう。 そして相手チームのゴールキックに対してもただマンツーマンをするのではなく、ボールを誘導して仲間と連動して狙いを持って奪おうとしていました。
それも2回くらい相手に上手くプレスを外されたら、すぐにベンチから指示が出てプレスのやり方も変更していました。中盤での攻防も相手のシステムやそこからの動きに合わせて対策を練り、非常に組織的なプレーをしていました。
決して大げさではなく、分刻みで攻守において目まぐるしく戦い方が変わっていきました。それらは日本では「ジュニアのうちはいらない」「もっと自由にやらせた方がいいから必要ない」と言われる、戦術的な要素を含んだものでした。
やはり年齢や理解力に応じたサッカーはあっても、大人のサッカーと子どものサッカーという区別はありませんでした。それらをスペインだけでなく・プロクラブだけではない今大会に参加していた海外の多くのクラブが当たり前のように行なっていました。
強いクラブとそうでないクラブの差はその変化のスピードと持ち合わせている対策の種類の多さだと思います。それらを実行する為には指導者が普段から練習を通じて選手たちにサッカーを学ばせ、戦術的な知識が選手達にストックされている事・ベンチから試合を分析した上で対策がすぐにピッチへ提示できる事が必要となります。
ドリブル中心は皆無・選手が考えるとは?!
そしてドリブル中心で攻撃するチームも見受けられませんでした。おそらくそんなプレーを海外でしていたら激しく削られて怪我をしてしまうでしょう。分刻みで対策を練らなければならないスピード感の中で選手達に「どうなってる?自分で考えてみて!」なんて言っている時間はないのです。上手くいかない状況が起これば1秒でも早く解決しないと手遅れになってしまいます。
逆に相手のプレスが1topの場合と2topの場合で異なる対策を選手に伝えたら次の試合で「相手が1topだから、これ狙おう」とピッチ内でレアッシの選手が話をしていました。
これは選手が考えて決断しているとは言わないのでしょうか?戦術を教えると判断を奪う、というのは本当に正しい考え方なのでしょうか。
こうやって海外に出て戦ってみると日本の常識が世界では非常識であったり、世界では当たり前に行われていることが日本では特別なもののように捉えられていることが実感できます。日本のサッカー界を思い返すと、国内で散々騒がれたものの、海外に行ったら満足に出場機会を得る事なく帰国した選手や例がいくつあったでしょう。それは小さい頃からサッカーを積み重ねてきた選手と小さい頃はドリブルやリフティング、年齢を増したらとにかく走って戦う事ばかりを求められてきた選手とでは勝負にならないからではないでしょうか。私がスペインで最初に所属したクラブで「なんで○○(当時サッカー留学していた小学3年生の日本人選手の名前)は守備ができないんだ?何度言ってもプレッシングが理解できないんだ」とスペイン人コーチから言われた事がありました。「それは日本ではプレッシングを9歳ではやらないから、プレッシングの考え方すら知らないんだと思う」と答えた私にそのスペイン人は「じゃあどうやって守備をするんだ?何歳からやるんだ?」と驚いていた事を思い出します。世界ではきっとチームとして攻撃し、守備をする事は当たり前なのでしょう。むしろそれができなければサッカーはできないとさえ考えられているのではないでしょうか。よく基本の上にオリジナリティが生まれると言われます。サッカー先進国で何が基本となっているかを知ってからでないと【日本のオリジナリティ】はサッカー界において生まれないのかもしれません。だからこそ私たち指導者は勉強を重ね、その中で【世界のサッカーでは何が行われているか】を常に知ろうとしなくてはならないと思います。世界は私達が考えている以上に物凄いスピードでサッカーを進化させています。このままでは何年掛かっても日本が追いつく事は出来ないかもしれません。でもその部分にこれまで手をつけてこなかったからこそ、伸びしろがあるとも言えるかもしれません。レアッシからは日本代表はおろか、Jリーガーも輩出されていません(二種登録された選手は除く)。それでも本気で海外で通用し、活躍できる選手が出てくる事を目指しています。だからこそ今回の遠征で感じた世界のレベルを基準として日々のトレーニングや試合に臨んでいきます。個は個人技術に特化した練習でなければ育たないという常識を打ち破り、チームが成長する事で個人が伸びるという事そして低年齢から適切な戦術要素を学ぶ事が選手の成長には必要だという事育成と勝利は両立できる・内容と結果の両方を共存させる事ができるという事それらを証明できるように本気で頑張りたいと思います。カタルーニャ州の小さな街クラブが世界のビッグクラブのカンテラを打ち破る姿を見て、その光景が今でも脳裏に焼き付いています。彼らにできて、私達が出来ないと誰が言い切る事が出来るのでしょうか世界で戦える選手・チーム・クラブとなれるよ日々チャレンジしていきたいと思います!そしてこのコラムを読んで1人でも多くの指導者の方に共感していただき、同じような想いでサッカー・そして選手と向き合っていただければ幸いです。