続編 「多くの練習量を課す指導者たち」

前回の「小学生で週5回の練習はムダ。今だに抜けきれない根性論と練習量という神話」の続編です。
(なかなか思ったことを一つにまとめるのが苦手なので読みにくいかもしれませんが。)

「高い負荷がかかる練習」かそれとも「子供が判断できる遊び」か?

僕が問題にしているのは「知識や経験を持つ指導者(大人)が知識のない子供たちに必要以上の練習量を課している」ということです。

子供が健全に育って行くには、勿論学校での勉強も大事ですが、「遊びを通じてたくさんのことを学ぶこと」だと思っています。

例えばレアッシの場合、小学生の中・高学年になると『1回の練習時間は80〜90分前後』ですがハードです。
何がハードかというと『フィジカル的にめちゃくちゃきつい練習をさせられる』ということではなく、「練習のテーマ」や「コーチから要求されていることを理解し実践する」など、身体も頭の中も疲れます。

「練習の質はコーチが調整して選手に与える」わけですから子供にとってはきついと感じることもあります。

レアッシの育成コースの場合、「サッカー選手になりたい」「将来高いレベルでプレーしたい」という高いモチベーションを持ってクラブに入会した選手がほとんでですからそう簡単にへこたれるメンタリティではありません。

しかし、そのようなモチベーションを持っていても、やはり「まだ子ども」なので高いインテンシティ(強度)である『練習』は週3回で十分かと思います。

反対に「子供が自分で調整できる『遊び』」は高いインテンシティ(強度)にはなりません。きつくなったらやめればいいし、飽きたら違うことを自由にすればいい。

僕らが子供の時にはサッカー以外にも野球をしたり自転車で走り回ったり、木に登ったり、『体を動かす遊び』をたくさんしていました。

このような運動経験は決して『サッカーの練習』ではありませんが、『運動能力の向上』という意味では非常に重要なものです。そのような運動経験がサッカーにも生きてきます。

ただ、これらが「大人に強制させられる『練習』」だったとしたら「楽しくはない」し「自分でコントロールできない」し、子供の健全な成長には反対に働くのではないでしょうか。

練習日以外に何をしたら良いか?

そうは言っても「自分のライバルや対戦する相手よりも練習しないと落ち着かない」という場合はどうしたら良いか?

答えは簡単です。大人の干渉なく『友達とボールで遊べば良い』だけです。サッカーは『複合的な運動』です。そしてボールを扱う運動はコーディネーションを刺激します。飽きたらやめて、やりたくなったらボールで遊ぶ。
またボールを使わなくてもスケボーみたいなもので遊ぶことや、練習ではない違うスポーツで遊ぶということも良いと思います。間接的にサッカーに必要な運動能力が向上します。
楽しいし、サッカーにも役立つし一石二鳥ではないでしょうか?

ただ注意したいのが決してそれが「大人に強制させられる練習になってはいけない」ということだけです。
(当然、スケボーが乗れるまで朝早く起きて練習しろというのはダメです笑)

コップの水が溢れている

グラスに一定量の水を注ぐと、グラスから水が溢れます。どんなに足しても水は溢れてそれ以上グラスは水を貯めることができません。

長い指導経験上、たくさんの選手を見てきましたが、高校や大学である程度高いレベルでプレーした選手の育ち方には大きく2つの例があります。

①「いつもボールで遊んでいた」
その選手はサッカーが好きで好きで良くボールを蹴ってました。小学生の頃からセンスが良く、しかし保護者の方は「もっと練習しなさい」とは言っていなかったです。
「休みの日はいつも友達とボールを持ってどっかに遊びに行ってる、ちゃんと勉強もしなさいと言ってるんですよ」ということ。その選手は練習や試合も好きでしたが、友達と遊ぶことも大好きだったのでしょうね。
勿論サッカーをやったり鬼ごっこをやったり、大人が干渉しないいろんな遊びをしていたと思います。

②「いつも練習させられていた」
また別の子は、①の選手と同じようにセンスがありました。
が、いつもお父さんに練習させられていたケースです。
熱心な方で、練習がない休みの日は「あれをやれこれをやれ」。子供も頑張っているようでしたが、「あんまり練習させない方が良いですよ」という話はしましたが、保護者の方もサッカーではありませんが昔スポーツをやっていたので、「子どもをサッカー選手にするためには」と頑張っていました。
その選手もある程度高いレベルに行きました。

両者とも、凄くメンタリティのある選手だったので、練習でも100%、試合でも常に100%以上を出そうとしていました。

ただ、ここで②の選手に対しての感想ですが、おそらく練習日以外に練習をしなくても同じようなレベルに到達したと思います。

①の選手と同様に少年期の成長に必要な「遊ぶ」ということを練習日以外に行っていても同じようにそのレベルに達していたと思います。

それ以上の練習は怪我のリスクもありますし、何より「コップから水が溢れている」状態だったのではないかと考えています。
更に、怪我のリスクだけでなく、少年期に体験しなければならないことを捨てて『サッカーだけに取り組むこと』は人格形成にも大きなリスクがあるように思えます。

子どもは(特に小学生)にとっては「大人の影響力は大きい」ですから、無理やり課せられるものに対して「No」と言えません。中学生、高校生くらいになっていけば「一人の人間として自立して」ゆくので、大人の意見をそのまま受け入れず、自分で判断するようになります。

よくある、「子どもの頃に勉強やスポーツを無理やりやらされたり、進路を勝手に決められたりして、思春期に手がつけられなくなる」などのケースは誰も望まないことです。

だから大人が調整しないといけない

賛否両論あると思いますが、未だに指導者が勉強をせずに「子どもに必要以上の練習を課している」状況には反対です。これだけ様々な情報が入り、日本のスポーツというものが見直されている中で、指導者が全く勉強していないというケースはよく見受けられる現象です。

好きなサッカーだから、週に3回みっちりと練習して、ちゃんと宿題をやって、友達と体を好きなだけ動かして遊んだり、たまには工作を作ったり、室内でゲームしたり。友達と喧嘩することもあれば、学校で率先して嫌なことをやったり。週末に1日(半日)高いインテンシティの試合を行って、試合に負けて泣いてすぐに忘れてケロっとしたり。試合の後は家族で過ごしたり、たまにはソフトバンクの試合も見たり。
いろんな経験が子どもの成長には必要です。

それらを全て奪って「サッカー漬け」にすることが、世界で通用する選手を輩出することに繋がるとは思いません。勿論『日本の文化・日本人のメンタリティ』は重要ですが、時代錯誤なものになってはその良さも生きなくなります。
(今回は小学生の例です。中・高校生になると少し違うかと思います)

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

サッカーコーチが学べる情報サイト『ジュニアサッカー大学』を運営