ジュニアの8人制サッカーは改悪だったのか

今回は最近ネットでも検証という形で話題に上っているジュニアの8人制サッカーについて私見を述べたいと思います。

まず私は8人制サッカーについて賛成です。それはより少ない人数で行うことにより、個々人の責任感やボールタッチの数・プレーへの関与が増すと考えられるからです。
ではなぜ、ここに来て8人制について検証がなされるのか、そこについて考えていきましょう。

私が感じる8人制の課題
1.試合時間が短い
前後半で40分ほどしかないためフィジカル勝負に持ち込めたり、試合のテンポを選手が感じにくい状況です。6年生であれば15分×4ピリオドや20分×3ピリオドなどがよいのではないでしょうか。
2.オフサイドルールの影響で負荷が高すぎる
11人制と同様にハーフウェーライン以降はオフサイドがあるので守備陣形はとてもコンパクトになります。そのためボールを受ける前や受けた後に時間とスペースがなく、サッカーがバタバタしてしまいます。ですのでペナルティーエリアの数m手前にラインを引き、そこまではオフサイドを取らないようにするのがいいと思います。
3.ゴールエリアからのゴールキック
低年齢ではキックの飛距離が短いためゴールエリアからのゴールキックではボールが前進せず、とにかく前からマンツーマンDFをするチームが続出しています。そこで5年生くらいまではペナルティエリアからゴールキックができるようにするのが良いと思います。

では一般的にどういった課題が出てきているのか
ネットにあった課題として
【出場できる選手の人数が減る】
【11人制の方が相手選手が多いので簡単に突破できない】
【8人制から11人制への移行が難しい】
【勝つためのサッカー?大人のサッカー?が増えている】
といったものが挙がっていました。

そういった課題は8人制では解決できないのか
1度に出られる人数が11人制に比べて3人少なくなるので指導者が出場時間などに意識を持たなければ出場できる選手の数が減るのは当然です。だからこそ、現状のスタッフの数に見合った選手数を抱えるべきですし、選手を多く抱えるなら試合機会を確保できるようにクラブが工夫しなければなりません。

人数が減って守備のほころびが出てきているなら指導者が工夫して守備のテクニックや戦術について勉強し、守備のレベルを上げなくてはなりません。

8人制と11人制をまったくの別物として指導者が考えると、その2つに大きな乖離が生まれて指導を受ける選手たちが11人制では通じない要素を学ぶことになり、11人制へ移行した際に苦労してしまうのです。

そしてよく耳にする【大人のサッカーと子どものサッカー】という言葉、まずはそこを我々指導者が疑わなくてはいけません。もちろんボールの蹴れる距離やパワー・スピードが異なるのでそれぞれの年代に応じた特徴はあります。しかしサッカーの本質という部分は決して異なるものではありません。

課題解決のために重要なのは何か
前項で述べた課題についての4つの文章の全てに共通する1つのキーワードがあります。それは≪指導者≫という言葉です。
もちろん、現存する形式について議論する事は必要です。しかし、7人制・8人制・9人制それぞれにメリットやデメリットは存在し、完ぺきな形式はみつからないのではとさえ思えます。なぜならサッカー先進国のスペインですら、U12カテゴリーにおいてカタルーニャ州は7人制・バレンシア州では8人制・マドリード州では11人制を採用していたからです。そうだと仮定すると大切なのは、それを扱う我々指導者がどういった考え方を持っているかを議論する事なのだと思います。
例えば以前言われていたのは「勝利のみにこだわった(必要な)リスクを負わないサッカーをするのはトーナメント形式の大会が多いからで、リーグ戦の導入がその改善につながる」といった事でした。しかし未だにゴールキックでGKが繋ぐことをまったく狙わずにFWへロングボールを放り込む・DFがボールを持ったら判断なしにとにかく前へボールを蹴りこむチームはたくさんあります。もちろん、リーグ戦の導入がもたらした恩恵は間違いなくあったと思いますが、それでもその形式を扱う側に変化が見られなければそれは形骸化してしまうのです。
また、サッカーに必要な要素をまとめていくとジュニアだろうとジュニアユースであろうと共通する事が本当に多いということがわかります。それを年代が低ければ理解しやすいようにシンプルな形で伝え、年齢が上がるほど[早く・正確に・複雑な中で]行えるようにならなくてはいけなくなるだけなのです。

本当に課題を解決できる指導者になるために
現存するものにはすべて良い面と課題があります。そしてその形式について議論する事は日本のサッカーを発展させるために絶対に必要なことだと思います。そしてそれと同時に大切になるのは我々指導者が自分の指導の課題を見つけ、向き合い・解決するために勉強をすることなのです。レアッシはユースやトップチームを現時点では持っていませんが、Jリーグや海外の試合をテレビ観戦したり先日のサニックス杯のように生で高校年代の試合を観れる機会を大切にしています。それはレアッシの選手が先に進んだ時に困らないよう、上の年代で何が起きていて何を身につけさせなくてはならないかを知るためなのです。
選手が成長する為に本当に必要な事は何なのか。常にそれを自問自答し、そのスタンスを忘れずに指導していく事が大切になると思います。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル2
□指導歴
2007-2012 清水エスパルス普及部
2009-2012 エスパルスSS駿東JY U-13監督
2012-2013 U.E.SANT ANDREU Infanitil A (U14)アシスタントコーチ
2013-2014 U.E.SANT ANDREU Cadete B (U15)アシスタントコーチ
2014-2015 C.D.ALMEDA Alevin A (U12) 監督
2015-2016 U.E.Sant Joan Despi Alevin D (U12) 監督
      U.E.Sant Joan Despi Infanitil E (U14) 監督
2016-現在 レアッシ福岡FC