高校を卒業した時に(約20年前)、サッカーの指導者という立場になりたいと思った時に、今まで自分が過ごしてきた環境を変えたいと強く思ったのを今でも覚えています。
当時は僕の中学時代の恩師のような、学校という立場を超えて常に情熱を持って指導してくれている先生がいたのは確かですが、そうでない指導者がいたのも事実です。
おそらく福岡市の少年サッカーでも良くも悪くもいろんな問題があったと思います。
僕は若い頃から、保守的な、指導者の利権だけを守ろうとするスタンスに批判的でしたので、いろんな摩擦も起きました。事実を全部語るのは難しいですが、常に一番に考えるのは「これからの選手たちに良い環境を与えるために僕らが努力する」というスタンスです。
ですので、こういうコラムを書くのも「これから指導者を目指す若い人」に、僕らが良いと思える正しい道を歩んで欲しいと思う願いからです。
突然ですが、保護者のみなさんに質問です。
「サッカー界」というものを「日本の産業や経済の一部」と考えた時に、国内の優秀な人材が多くいる業界だと思いますか？
自動車産業のトヨタやIT産業、その他の事業の中で、日本が世界に誇れるものと同じように優秀な人材がサッカー界に集まっているとはイメージしにくいと思います。
これはサッカー界のみならず『スポーツ界』全体に言えることです。
タイトルから話がそれましたが、ジュニア(小学生)のサッカーの試合で、監督(指導者)が試合中に選手のプレーに対して笑っている光景を保護者の方も見たことがあると思います。
数年前、ある練習試合でスペイン人の監督が福岡市のチームの指導者に対して、「どうして選手がミスをした時にコーチたちが笑うのか？」と半分怒りながら質問したことがありました。
選手は常に一生懸命頑張っています。低い学年ならシュートを打つ際に空振りすることもあります。それを見た指導者が『あははは！』と笑い飛ばす行動が奇妙に感じるのは、僕らだけでしょうか？きっと保護者のかたは感じていると思います。
先日も遠征先で、対戦相手の若いコーチが試合中にこのような行動をとってました。
チームが上手くっている時は褒めたり冗談を言ったりしているのですが、失点すると急に怒り出す。点を決めたら冗談を言って選手を茶化すのですが、上手くいかないと罵声を浴びせます。
雨でピッチが悪い中、レアッシのGKの選手がゴールキックを蹴ろうとしてつまずいた時に相手ベンチから「あははは。」という笑い声が。
僕らは指導者の立場を守るのではなく、常に選手を優先して守りますので、反射的に相手の若いコーチに「選手のミスを笑うのをやめてもらえますか？」と指摘しました。
相手のコーチは「レアッシの選手を笑ったのではありません」!?
僕が言っているのはそうではなく、自分のチームでも相手チームでも、小学生でも中学生でも、真面目にプレーしている選手のミスを『指導者がへらへら笑ったり茶化したりする行為』自体がスポーツマンシップを欠いているということです。このような若いコーチが「指導者としての教育を受けないまま少年サッカーの現場に立っている」ということ自体、この業界が一般的な社会や常識からずれているという感覚を理解できない指導者が多いのは事実です。
そういう若い指導者を見るたびに、「うちのクラブなら厳重注意か即刻クビだ」と思うのですが、他のクラブの考え方があるかもしれません。
しかし、クラブの方針がどうであれ指導者が「あはははは！」と笑っている光景を保護者の方が「気分を悪く」見ていることを若いコーチは理解していません。
しかしそれは「こういう若い指導者を生み出しているサッカー界の問題」でもあると考えています。
若い指導者は、先輩たちの指導スタイルを見ながら学びますが、そもそも現在活躍するべき年代の指導者のスタイルが間違っていたら、日本のサッカー界が世界に追付けることはありません。
最近僕が感じるのは、若い指導者のスタンスを正すのは、その世界の先輩の指導者ではなく、『仕事をする上で社会的常識を持った大人が、若い指導者を一社会人として扱う』ことのできる一般的な社会で働いている保護者の方かもしれません。
移籍の問題も含めて、それくらい末端のサッカー界は社会的な常識からずれているということはおそらく指導者みんながわかっていることです。
ですので、「スポーツの特殊な世界」ではなく、それを指導するコーチが「社会でも通用する人間か」を見極めることがこの業界の発展につながると思っています。
このような話は、指導者側は嫌がりますが、健全な評価をする上では重要なポイントです。
