(「日本の」というと語弊があるので、今現在僕が住んでいる福岡県という地域に限定したいと思います。勿論同じような現象が他の県でも起きていることは想像できますが、実際に見たわけではないので。)
『サッカーを学ばないと上へは行けない』
ジュニア(小学生)年代の試合を見ていると様々なチームがあります。その中でもレアッシ福岡FCと他のチームとの大きな違いの一つに「戦術的な部分」が挙げられます。
レアッシでは年齢やレベルに応じて「選手へ要求される戦術のレベル」が異なりますが、ボールを扱うテクニックと同じくらい重要な要素と考えています。
ではサブタイトルにあるサッカーを学ぶとはどういうことでしょうか。「戦術」という観点から考えたいと思います。僕が留学していた、そして後藤、黒沼コーチが指導していたスペイン・バルセロナ。この街ではサッカーというスポーツが一つの学問として体系づけられています。そして「戦術」の分野でも日本とは比べものにならないほど、体系化され整理されています。
そしてヨーロッパの世界最先端のサッカーは戦術レベルがものすごく高く、その戦術を理解し実行できるレベルになるには、特に『小学生から中学生年代』において、サッカーの原理原則、普遍的な戦術、そしてプレーモデルに即したプレーができるようになっていなくてはなりません。
この時期に「サッカーを学ぶ」ことがないと、いくらドリブルが上手くても、いくらキックが上手くても、ヨーロッパで通用することは難しいかもしれません。
『小学生は何を学ばなければならないか?』
小学生年代で何を学ばなければならないかはレベルによって異なりますが、ここでレアッシの育成コースにおいてどのように練習メニューを組んだり、どのように選手にサッカーを学ばせているかを説明したいと思います。少し専門的になりますので興味のない方は飛ばして下さい。
①「サッカーのどのフェーズをトレーニングしているか」
・Ataque(攻撃)
・Transición Defensa-Ataque(守備から攻撃への切り替え)
・Defensa(守備)
・Transición Ataque-Defensa(攻撃から守備への切り替え)
サッカーは必ずこの4つの局面のどこかに位置します。勿論これ以外の考え方もできますがとりあえず。
②「何の戦術コンセプトをトレーニングしているか」
そして、場面の設定から学ばせる「戦術コンセプト」を設定します。代表的なコンセプトの例を挙げます。
●Ataque(攻撃)約30個の戦術コンセプト
Desmarque、Pared、Fijar、Línea de pase、Tempolización ofensiva、etc…
●Defensa(守備)約15個の戦術コンセプト
Cobertura、Permuta、etc……
前述したように小学生年代であっても選手の年齢やレベルに合わせて、フェーズと必要な戦術コンセプトを抽出しトレーニングを行っています。
『レアッシというクラブが選手の何を見ているか』
ある選手がプレーをした時にその結果について指摘する指導者は多いです。例えば、パスをミスしたら「どこにパスしてんだ!」よくある光景です。しかしレアッシではその結果ではなく、『何を考えていたか』を評価するようにしています。
「選手が何を考えて何をしようとしたか」。プレーの結果ではなくそのプロセスです。
(これも専門的に説明しますが興味のない方は飛ばして下さい。)
選手があるプレーをする時に何が起こっているかを説明します。
①認識(percepción) 選手はまず状況を認識します
②分析(Análisis) 次に状況を分析します
③決定(Decisión) そしてプレーを決定します
④実行(Ejecución) そしてプレーを実行します。
プロセスはこのようになるのですが、①〜③までは選手の頭の中で起こっていることです。そして④は実際に選手が体を動かして行うアクションです。
④に関してはテクニックに関するものと言えますが、①〜③は戦術と密接に関わっています。サッカーが「状況判断のスポーツだ」と言われるのはそのためです。
レアッシではパスをミスした際に、選手の頭の中で何が起こっていたかを評価するのです。
『育成年代から状況判断を伴うサッカーをすることの重要性』
では小学生や中学生年代では何をしなければならないかと言うと、「良い状況判断」を行えるようにするということがとても大切です。
そのため、小学生年代でよく見られる、ひたすらロングキックを蹴ることや、ひたすらドリブルするというアクションは「状況判断」を欠き、つまりそれを繰り返して行うことは「選手は何も学んでいないことである」と我々は考えています。
サッカーはテクニックやフィジカルのみで戦うものではありません。そこに『知性』が必要なスポーツです。それはサッカーが複雑であるが故に、知的作業を欠くことができないとも言えます。
「いつショートパスを使い、いつロングパスを使うのか」、「いつドリブルを使い、いつパスするのか」、「いつサイドチェンジを使い、いつバックパスをするのか」。「マークを外す動きはどのエリアでいつどのように行うか」、「いつマンツーマンマークでどのような状況ならゾーンでマークするのか」など、サッカーはとても頭を使うスポーツです。
そのため、小学生年代でも早く、「インテリジェンスのあるサッカー」をさせる必要があるのです。
選手自身が「良い状況判断を自ら下して主体的にプレーする」ために、『基本となるサッカーの原理原則』を育成年代の選手たちは学ぶ必要があります。