足が遅いと悩んでいる選手へ。本当のことを伝えます。

保護者のみなさんから見て、「うちの子、背が低いから」とか「足が遅いから」など、また自分自身がそのように悩んでいるという選手は意外に多いのではないでしょうか。それについて、色を着けずに答えたいと思います。
各クラブや指導者によって判断基準が違うので、レアッシのスタッフ、僕らがどのように考えているかを述べたいと思います。

「フィジカル的な問題」、それはハンデとなるのでしょか?

フィジカル的な問題は、ジュニア(小学生)やジュニアユース(中学生)といった育成年代の選手にとってはとても深刻な問題かもしれません。
Jリーグクラブでも、「基本的にはフィジカル重視」と明言しているクラブもあります。では、フィジカル的な問題がある場合、高いレベルでプレーすることは不可能でしょうか?

「スピードとは何か」という問題

特にジュニア年代では「足が速い」ということは、単純に見ただけでそれが利点だと感じれます。地域のトレセンの選考会などで選手を長い期間に追って把握できない場合、パッと見て分かりやすいフィジカル的なスピードを持っていることは有利です。
もし、僕が評価をする場合でも、短時間で決定しなければいけない場合はまずは着目するというより、自然と目に見える形で「速いなあ」という印象は当然受けます。
低い年代の場合、相手の選手の守備の対応が未熟なだけに、スピードだけで簡単に相手をかわすことができます。目に見える現象としては分かりやすい基準です。これはサッカーを知らなくても誰の目にも明らから部分です。なので、評価は単純にできます。「速いか遅いか」。

では「シンキングスピード」はどうでしょうか? つまり「頭の回転の速さ」、賢さとも言えます。これは選手が何を考えているかといった「頭の中を見る」ことになります。戦術的知識や指導者のレベルが高くないと見分けることがきません。
現代サッカーに求められる「スピード」とは、フィジカル的な速さだけでなく、脳処理の速さも含まれます。この脳の速さを見た目だけで判断するのはとても困難ですし、そこを見分けるのは指導者の力量が問われるところです。

また、ボールの速さというものあります。
人間が走るスピードより、パスなどでボールを動かす方が「速い」のは明白です。

更にまた「かけひきの速さ」という側面もあります。50mが何秒というものではなく、フェイントをいれることで「一瞬だけ相手を抜き去る」、タイミングをずらすことで、優位性を得るということもあります。
つまり「速さ」とは絶対的な側面と相対的な側面があると考えることができます。
「何に対して速いのか」。大きさや強さなど、形容詞的な言葉はこの2つの側面を持っています。

足が遅くてもいいというのは本当か?しかし、足が速いからサッカー選手になれるわけではない。

「責任ある立場のサッカーの指導者」という観点で言うと、「足が遅くてもよい」というのは残念ながらウソだと言うしかありません。足が遅くても「その他の部分で秀でていれば」欠点をカバーできるかもしれませんが、当然、足が速いに越したことはないからです。「遅いよりは速い方が良い」というのはみなさん納得だと思います。
しかし、足が遅い分、他の部分で勝負ができるというのは本当です。前述したように、現代のスペースと時間がないサッカーの中で「考えて良い判断を下すスピード」というのはとても重要な要素です。ジュニア年代で通用するドリブルが、世界のトップクラスになるにつれ通用しなくなるのはそういった要因もあります。
いくらドリブルが上手くても足が速くても、「そこにシンキングスピード」がなければ宝のもちぐされです。

この「頭の中を鍛える」というのはかなり大変です。戦術メモリーとも表現できますが、小学生年代からやっておかないと鍛えることはできません。小学生ではテクニックを、それ以降に戦術をなどとやっていては「現代サッカー」では遅れることになります。

シンキングスピードを上げるのは誰でもできる

サッカーにおいてボールを扱うテクニックやフィジカルなどはとても重要な要素です。しかしそれと同じくらい重要なものに「戦術的な判断力」というものがあります。「この部分はチームの練習や試合でしか学べず」、小学生(ジュニア)年代から行わないと、習得できるものではありません。イメージとしては16,7歳くらいまでには基本的なものを理解して実行できる力がないとその後の活躍が難しくなるかと思います。
戦術的な知識を得ることで「考えるスピードは速く」なります。

しかし、高いレベルに行くにはアスリートとして最低限は必要

そして、また厳しい現実ですが、「フィジカルがなくてもプロ選手になれる」というもウソだということです。巷ではそういう表現の情報があふれていますが、プロのサッカー選手になるということは「トップアスリート」なわけで、最低限のフィジカルは必要です。メッシはとても速いがイニエスタは速くないと言っても、普通の人よりは速いです。トップクラスの中では足が速くない方というだけで、トップレベルの速さが異常に高いだけで、そう見えない選手も一般人と比較すると速いのは周知の通りです。

ではある程度「足が速い」選手はどこで勝負するのか。
今小学生で足が速くないことで悩んでいる選手は何をするべきか?

チームの練習でやることと個人でやることを区別する

それは2つあります。先ほど述べた「戦術」に関する部分はチームで行うしかありません。
ですので、「足を速くする」ということは「チームの練習以外」で行うのが良いかと思います。なぜチーム以外の練習でやるかというと、チームではチームでしかやれない(例えば戦術など)ことをトレーニングする時間しかないからです。チームのトレーニング時に、足の速さを強化するトレーニングは長くても10〜15分程度しか取れないため、これでは効率があがりません。もし、チームのトレーニング内に足を速くする練習を長い時間取り入れたら、チームでしか学べないものができなくなり、結果的には選手個人のレベルは上がりません。

これについては「日本人がよく陥る、サッカー以外のことを練習時間内に行うことでサッカーの本質からかけ離れてゆく」というテーマで後日述べたいと思いますが、通常の練習時間以外で行うことが適切かと思います。

個人で戦術練習をすることはできませんが、フィジカル的な部分は個人で行えます。理想としては、チームでの練習で戦術的な部分を伸ばし、個人の問題であるフィジカルの部分はそれ以外の時間で取り組むことが良いかと思います。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

サッカーコーチが学べる情報サイト『ジュニアサッカー大学』を運営