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公益財団法人 日本サッカー協会の移籍に関する通達
先日、サッカー日本代表や、僕らのような国内の公式戦に出場するクラブチームや少年団が登録する、または管轄する「公益財団法人日本サッカー協会」(JFA)が、おそらくはじめて「小学生年代の移籍」に関する通達を行いました。
少年サッカーにおける子どもたちの移籍を勝手に制限するクラブや指導者側の地域の独自のルールを認めない主旨です。小学生年代の選手の移籍をスムーズに行えるよう、地域のチーム・指導者を管轄する県協会などに通達が出されました。
なぜ通達を出す必要があったのか、それは日本のアマチュアサッカー界の中で、選手より力を持っているクラブや指導者がそれを認めない風潮があったからかもしれません。
日本全国を見渡せば、上記のように地域に独自のルールを設けてクラブや指導者のみが守られる仕組みを作っているところがあるようですが、我々が所属する福岡市にはそういうものはありません。勿論、移籍に対して批判的な人もいますが、全体としてごく稀で少ないのではないでしょうか。
育成年代(特に小学生や中学生)での「チームの移籍」に関して、選手や保護者の方も悩んだ経験が少なからずあるかもしれません。
この問題に関して、一般的に「保護者側の意見」は多いのですが、「クラブや指導者側の意見」はあまり出てきていないとの印象を僕は持っています。保護者側の意見が正論なのに対して、クラブや指導者側が納得できる正論を持っていないケースもあるように感じます。
当然ですが小学生のチームの移籍は問題ない
個人的ではなく、クラブスタッフ全体の意見ですが、小学生の選手がチームを移籍することは基本的に何の問題もない、と考えています。
日本サッカー協会の考えと同じく「プレイヤーズファースト」、「移籍の自由」というのは当たり前ですので、クラブや指導者が育成年代である子どものチームの移籍を制限する権限は何もありません。
モラル的にもそれを制限することはナンセンスです。クラブは選手を選ぶ権利がありますが、当然選手にもまたチームを選ぶ権利があります。
たまたま入ったクラブに満足や納得がいけなければ移籍するのは当然です。一度入ったらずっとそこに所属しなくてはならない、ということ自体が不自然でおかしいということは言うまでもありません。
自分にあったより良い環境を求めて、地域を超えてクラブを選ぶことには何の問題もありません。移籍ということに関して、感情を抜きにした考えを持っているクラブや指導者はまだまだ少ないかもしれませんが、僕たちは当然のことだと考えています。
ほとんど少ないケースだと思いますが、小学生のサッカークラブの移籍をある側面から一方的に批判して「悪いこと」とするのは、クラブもしくは指導者側の「社会的常識」を欠いています。
移籍を嫌がるクラブと指導者(指導者側の問題)
正直、僕もクラブを運営する立場として、そして選手を指導する立場として、自クラブの選手が移籍する時にはとても残念な気持ちになります。転勤や家庭の都合以外で、チームに不満や他のクラブに魅力を感じて離れて行く場合は、とても残念です。
それは、その移籍する選手が「僕らが提供する環境」に満足できなかった、もしくは不満を持っていたことに気づかず、もしくは、選手のためにより良い環境を提供することができなかったと反省します。
しかしそれは、結果的には『自分たちのクラブや指導に魅力がなかった』ということだと考えています。
ですので、そういう反省を踏まえて更にクラブと指導者が成長してゆく必要があるのだろうと前向きに捉えるようにしています。もっともっと今の自クラブのサッカー環境、指導者の質、その他の環境を良くして、素晴らしいものを提供できるように努力しよう、というのがクラブのスタンスです。
当然「移籍を拒む」ことはありません。それはクラブの努力が足りなかったというだけのことです。移籍したいと言う選手が次に活躍できるように、しっかりと送り出す必要があります。
選手が移籍するのは『自分たちに魅了がなかった』と思うのが僕らスタンスです。だからこそもっともっと魅力あるクラブや指導をしなければならないと感じ、指導者がもっとレベルを上げなくてはならないと思うことでクラブが成長できると考えています。
僕個人としては、もっともっと質の高いクラブや指導者が育つためには、選手がもっと移籍する方がサッカー界の発展になるのではないかとも思っています。選ばれるクラブを創造することは自然に質を上げて行かなくてはいけません。「移籍」というのは、選手がクラブや指導者を「選ぶ」ということです。
移籍されることで、自クラブの経営や指導内容をもっと良くしようという気運が高まれば必然的にサッカー少年少女の育成環境は良くなります。
しかし他のクラブのことは分かりませんが、協会のこのような通達が出るという時点で、日本の小学生年代のサッカー環境が、一般的な社会、もしくは常識とずれているのかもしれません。
(今回このような記事を見つけましたので参考に)
移籍を簡単に考える悪い例(選手・保護者側の問題)
前述したのは「移籍に関する」問題をクラブや指導者側が抱えているケースです。
次に移籍したいという選手や保護者の方に問題があるのではないかと思えるケースを挙げてみたいと思います。
「少し試合に出られなかった、もしくはクラブにちょっと気に食わないことがあったので簡単に移籍する」
実際にあった例ですが(当クラブかどうかは別)、あるサッカーが上手な選手がいて保護者の方も期待している。しかしそのチームには同じくらいもしくはそれ以上に上手い選手がいました。
僕らスタッフは「成長のためには競争が必要」もしくは「地位が安定すると成長しない」と考えているのですが、保護者の方が「うちの子が一番でないと気が済まない」という考えだったので必要以上にライバルの選手を意識していました。
子どもどうしは仲良く切磋琢磨しているのに、保護者の感情が前面に出て移籍してしまいました。その後もやはりどのチームに行ってもフィットせず、数回移籍を繰り返したようです。
保護者の方はプロサッカー選手になって欲しかったようですが、指導者側から見れば「絶対に成功するはずがない」というものでした。
これは当然の帰結です。基本的にサッカーは「チームに自分をどのように適合させるか」という側面を強く持っているスポーツなので、少し気に食わない部分はあるが、その中でどのように適合させて行くかというのはとても重要な要素です。それを取っ払って行くと「個人スポーツをしたほうが良い」のです。サッカーはあくまでも「チームスポーツ」だという真の意味を理解していないと、このようなケースに陥ってしまいます。
自分の子どもは一番でなくてはならない、少しでも上手くいかなければ移籍してしまう。
これを繰り返している選手で、成功した選手はおそらく一人もいません。Jリーグの下部組織に入るくらいはあってもトップには行けず、なおかつ、青年期にサッカー以外の面で大事にしなくてはいけない(学ばなければいけない)ものを大きく失う可能性があります。
その子供の人生に親は責任はとれません。
「過保護・過干渉が原因」
最近は過保護よりも「過干渉」のほうが多いと感じています。これに関してはあまり詳しい例は挙げません。なぜなら上記のように「サッカー選手としての育成の考え」という以前に、「常識的に考えれば理解できる」ものだからです。
サッカー選手の成長という教育的観点、「もう少し我慢しなければ」という以前に辞めてしまう場合はクラブ側の責任というより、選手自身の問題というケースもあります。
僕も経験上このようなケースは少ない例ですが、いくつか経験があります。クラブや指導者側に問題がある前に、保護者や選手に問題があるケースも少なからず(本当に僅か)あるのが現状です。
いずれいせよ、いろんなケースがありますが、小学生・中学生年代のアマチュアサッカー選手の移籍ということに関して、クラブ・指導者側、もしくは選手・保護者側が『社会的な常識の範囲』で考えれば、何が良いケースで、何が良くないケースかの判断はつくかと思います。
クラブや指導者は努力を継続する
前述した選手や保護者に問題がある場合も少なからずあるのですが、ほとんどのケースは「クラブや指導者に問題がある」と我々指導者が考えることが健全(将来につながること)ではないでしょうか。
選手が集まらない、選手が移籍してしまうのは自分たちに魅力がないからだ、努力が足りないからだと考えればその後のクラブ・指導者の質は高まっていきます。そのようなクラブが増えれば自然と、指導者やクラブのレベルが上がり、選手にとって良いより環境ができると思います。
日本にプロサッカーが誕生して約20年。地域の少年団やクラブのあり方が大きく変わる時代がすでに始まり、我々クラブ側はすでにその中にいることを理解する必要があります。
選手にとって本当に価値のあるクラブを創造しなければいけません。