みなさんこんにちは。
今回は、普段はなかなか街クラブ(少年団、クラブチーム)の指導者や保護者の方が気付かない、『サッカー選手の成長の妨げになる要素の一つである、『クラブ内で「王様」になることの危険性』について考えたいと思います。
これはサッカー選手の成長にとって、もっとも重要な要素の一つである『競争』と深く関わる問題です。レアッシのコーチたちがスタッフ内でよく話していること、もしくは僕がスペイン・バルセロナで経験した・見たものを交えて考えてみたいと思います。
(写真は2018年4月にクラブで行ったスペイン・バルセロナ遠征。ヨーロッパのビッグクラブの下部組織も参加する国際大会MICに出場)
『チーム内で王様になる』とはどういうことか?
ジュニア(小学生)やジュニアユース(中学生)など育成年代でよく見られる現象として、そのチーム内で一番サッカーが上手く、他にライバルがいない環境で数ヶ月、数年過ごすことで、チーム内のヒエラルキーが固定化され、なおかつ指導者がエースにはあまりプレーの要求をしなくなる、ということが挙げられます。
チーム内ではエースとして存在し、「常にスタメンでレギュラー」。試合に負けると他の選手のミスをエースと指導者は指摘する、指導者はその選手を「大事にしたい」のであまり厳しく要求しない、という構図です。
選手間でも「あいつがいないから負けた」、指導者も「今日はメンバーがいないので…」、保護者の方も「◯◯くんがいないと…」
など、ある特定の選手が、そのチーム内で絶対的な存在となってしまうことです。
ライバルがいなと絶対に成長しない
なぜこれが問題なのか?選手の成長を妨げるのか?
答えは簡単です。
「サッカー選手としてトップもしくは世界を目指すなら、どんな選手でも必ず挫折を乗り越える必要があるし、安泰と同時に成長がストップするから」です。
安泰するというのは、「特に変化がない」とも考えられ、そこに成長は見込めません。それは本人にとっては一見良いことのように思えますが、サッカー選手の成長としては大きな妨げになるものです。
では、何がステップアップのために必要か?
それは「ライバルの存在」です。これは一見ネガティブな側面も含む「競争」という表現よりも「切磋琢磨」と考えると理解しやすいかもしれません。ライバルがいないことが選手の成長の停滞を招くことは容易に想像できるかと思います。
「いつも通り」は停滞を招く!?
例えば小学生年代で、自分のクラブ内にライバルがいなくて、自分のプレーについて新しい要求をコーチからされない場合は『完全に成長が停滞』します。
唯一のエースという立場になると、新しいことを学んでいなくても同学年では問題なく(いつものようにプレー)できますので、上手くいっているように思えます。
しかしこの「いつも通り」というのもまた問題です。いつもと同じはイコール停滞です。何故ならいつもと同じでは「新しい刺激がない」=「新しいことを学ばない」となってしまいます。
(余談ですがレアッシでは上手くいってるのにポジションを変更したりシステムを変更するのはこういう狙いもあります)
量ではなくて質が大事
もしこのようなレベルの選手が『常に1回の練習や試合でも手を抜けない状況』というチームでプレーしている場合はどうでしょうか。たった1回の練習や試合の質はどちらの方が高く、成長するでしょうか?
常に試合に出るために新しいことを学び、そして新しいことを学ぶからこそ集中して臨みます。
競争があるからこそ、努力を継続することを学び、仲間の大事さも理解します。
もちろんそういう状況は、簡単に試合に出れないがゆえに『子どもが経験しておきたい小さな挫折』も与えてくれます。そして、高いレベルに行くには常日頃、競争の中に身を置くことが当たり前だと感じるようになります。
(レアッシでは競争を促すのは以上のような理由です。『高い意識を持った選手が集まり切磋琢磨することにより更に高いレベルに行くことができる」とクラブでは考えています)
同じ状況で、同じ内容のことをひたすら繰り返すのではなく、常に新しい状況で新しいことにチャレンジすることのほうが数倍も成長します。
もちろん基本的なものを繰り返すことは必要ですが、それは形を変えなくてはなりません。
いつも同じ環境で同じことを繰り返して停滞するのか、それとも「競争=切磋琢磨する環境」に身をおくのか、選手のタイプもありますが、いずれにせよ「選手にとって成長する環境とは何か」ということを考えることがとても重要です。