「考えて動け!」「ちゃんと判断して動け!」
そんな言葉をグラウンドで聞いたことはないでしょうか。確かに考える事や判断する事はサッカーにおいて非常に大切です。
しかしただそれらの言葉を投げ掛けられただけで選手たち自身でプレーを変えるのは簡単ではありません。
しっかりとトレーニングを通じて“考える為に必要なポイント”や“判断する為の基準”を習得しなくてはなりません。
反対にそれらをしっかりと身につけていれば小学生でもしっかりと判断してプレーする事は可能ですし、試合の中で改善する事もできます。
今回はそれらの例をレアッシU11のプレー映像を用いて説明したいと思います。
3つの映像で解説していきますが、全てボールを持っていない選手にフォーカスして説明します。
最初の映像は改善点のあるプレーについてです。
ゴールキックでGKからパスを受けた選手がドリブルで前進している際に前方の2人が動き出しているのですが、赤丸で囲まれた選手と青丸で囲まれた2人の選手が同じ方向へ動き出しています。
それによって彼らをマークしている黄丸の2人のDFは何も迷うことなく彼らと同じ方向へ走り出し、ボールを受けたいゾーンを埋めてしまっています。
このプレー後に彼らに練習でも伝えている動く際に判断する為の基準を確認がてら伝えました。
これから見ていただく2つの映像はこの修正のコーチング後のものです。
2つ目の映像についてです。
GKがボールをキャッチしサイドの味方へ展開、パスを受けた選手がドリブルで前進しています。
その時にボールに近い赤丸の選手(選手1)はサイドに開いてパスを受けようとし、ボールから遠い青丸の選手(選手2)は赤丸の選手1が空けたスペースでパスを受ける為に動きます。
しかしそこで選手1は相手選手(No.10)が自分と同じ動きをしてついてきたので、止まってマークを外そうとします。
そして選手2はその動きを見てパスを受ける位置を変えてサイドに開いてパスを受けようと走る方向を変えています。
結果的に方向を変え切る前にパスが来てボールは繋がりましたが、私はその結果よりも映像1で動きが重なった2人の選手がしっかりとミスを修正しようとした点を評価しました。
最後の映像です。
最初に赤丸の選手1は相手選手2人の間(青のゾーン)でパスを受けようと動きました。
しかしパスが出て来ず、タイミングがズレたので動き直して相手の背後のスペースを狙いました。
その動きを見た青丸の選手2は選手1が動いて生まれたスペースでパスを受けようとアクションを起こします。
選手2をマークしている黄丸は一瞬選手2について行こうとしますが、選手1が裏に飛び出しているのをケアしなくてはならず、選手2をマークする事を諦めます。
それによって選手2はフリーになる事ができたのです。
残念ながらボールホルダーは別の選手へのパスを選択したのでフリーになった彼はパスを受ける事はできませんでしたが、この動きのコンビネーションは十分に評価するに値するものだと思います。
ジュニア年代ではまだまだ「ボール扱いだけやっていればいい」「難しい戦術は中学生になってからでいい」という意見も多いと思います。
しかし小学生のうちから少しずつ適した戦術を身につければ更にレベルの高い事を身につけられる可能性が出てくるのです。
また、選手が上手くプレーする為に必要なポイントを学び体得する事が「ピッチの中で自ら考え、行動できる自立したプレーヤーとなる」という事に繋がるのではないでしょうか。
先にも述べましたが、選手だけでヒントも無しで問題を解決する事は簡単ではありませんし「考えろ」と言われただけではどう考えていいのかがわからないのです。
私たち指導者の役割は
・考え方を教える
・考える事を習慣化する
・考えた上で行動する
・その行動の結果から次の事を考える
というアクションのサイクルを選手たちに伝え、理解させることではないでしょうか。
「子どもにはできない」という大人の思い込みというフィルターを外して彼らの可能性に目を向けてみましょう。